Monotype タイプディレクターの小林章さん制作のモダンローマン。小林さんは制作当時のデジタル版 Didot や Bodoni が、活字とは違いあまりに直線的に処理されてしまっている事が哀しいと述懐しており、この書体は拡大すると判るが、セリフがちょっとしなっていたりステムに微妙な膨らみがあったりして、その辺りが解消されている。最初はヘアラインが繊細なものをデザインされたが、後に本文用に適した Text と、いわゆる袋文字的な Open を制作されている。この書体によく似合うフレームの Border も別にあったが、現在は Text のグリフの中に収まっている。
余談だが、11月に Monotype が日本でイベントを行うとのこと。小林さんを始め、豪華ゲストが登壇する模様。詳細は Type& にて。
※どうでもいいけどサンプルイメージ、Acanthus のスペルが…
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割と有名な書体だが筆者が好きなので紹介する。元は作者が銅板に浮き彫りするためにデザインした書体らしいが、それを Stanley Morison が活字にしてはどうかと提案し、できあがったものらしい。全体的に字幅が細めで、ストロークに太細の差が弱く、末端部分は広がってセリフのようになっている。見本帳によっては Serif に分類されてることもある。クラシカルな雰囲気があって、とても好きな書体である。古いパブとかに合いそう。名前は今調べたら、ドイツにアルベルトゥス・マグヌスという神学者がいたらしい。作者はドイツ人なので、ここから取ったのかな。ファイルフォーマットは Std 版と Pro 版があって、グリフ数が違う。購入の際は注意。
ヴェネチアンの代表的なローマン。このブログではあまりメジャーなものは紹介してないが、これはメジャーな中でもマイナーな方(?)なので紹介してみる。15世紀イタリア(出身はフランス)のプリンター、Nicolas Jenson の書体を Bruce Rogers が現代に蘇らせたもの。Nicolas Jenson についてはタイポグラフィの教科書を開けばたいてい名前が出てくるので、興味のある方は調べて欲しい。この書体はx-ハイトが小さくて、他の書体の感覚で 9pt とかで組むと結構小さくて困ったりするが、クラシックな雰囲気満載で味があって、筆者の大好きな書体のひとつである。イタリックは確かデザイナーが違ったはず… Arrighi とかじゃなかったかな。この書体に合うものとして採用されたらしい。名前のcentaur とはケンタウルスの事で、同名の書籍をこの書体で組んだ事から名を取ったそうである。
本日11月第3木曜日はボジョレー・ヌーボー(新酒)の解禁日、という事でなんかしらワインにちなんだものを…と探したが特に見つからなかったので、ブドウのツタなんかをモチーフにしたオーナメントを紹介する(強引?)。20世紀初頭ぐらいまでよく用いられていた装飾活字(字?)である。写真の普及で装飾があまり必要でなくなった事や、そもそも時代が下るにつれ過剰装飾が好まれなくなったりして廃れて行ったが、まぁこんな感じでちゃんとデジタルで残っている。画像は筆者が持っている古い書籍で、1928年にMonotypeが発行したこのオーナメントの作例集である(ちなみに文字部分は確か Fournier だったかな)。Rococo Ornaments と一緒に使用した作例がふんだんに掲載されており、見ているだけで楽しい。今入手できるものとしてはパイインターナショナルの『装飾活字』があるかな。付属のCD-ROMには、フォントではないがEPS画像としてこれらのオーナメント類が入っている。コチラのブログでも条件付きで色々配布している。字が小さくて読みづらいがなかなかおもしろい。
碑文系のプロポーションを持つサンセリフ。このテでは大変有名なGill Sansの影響があるなぁと思ったら、解説文にちゃんと作者であるEric Gillの本にルーツがあるとある。Gill Sansよりはx-ハイトが若干小さいかな。イタリックはこちらの方がちょっとコリっとした印象があり、手書き感が弱い。現在6ウェイトだが、今後Extra BoldとBlackを加える予定だそうだ。ただいま50%オフセール中。ちなみにGill Sansは、みんなが街中でよく見てる書体である。実はファミマのロゴはGill Sansがベース。
※訂正:Corinthianがベースだそうです。知ったかぶりで恥かいた(笑)。
今年発表された新しいヒューマニストサンセリフ。最近はややジオメトリックなものが好まれるようだが、個人的にはこういうのの方が好きかな。やってみれば判るが、デザインするのはこっちの方がはるかに難しい。Qのテールが特徴的で、あまり見た事がない。こういう特徴的な形を持つ字を名前に組み込むのはよくやる事らしい。意味は折丁…だったかな? 確か昔は(今もか)紙のサイズはだいたい決まっていて、本を作る時はそれを何回かに折るのだが、2つ折りサイズを folio、4つ折りサイズを quire、8つ折りサイズを octavo、と言ったような気がする(うろ覚え)。10ウェイト。今なら全ファミリーパック$499が$99。いつまでやってるかは判らないので購入するならこの機会に。
すごくマジメな人がマジメに作ったんだろうなぁという感じがするジオメトリック・サンセリフ。Futuraに比べて刺々しい部分がなく、x-ハイトも大きめで柔らかい印象がある。小文字の j もちゃんと曲がっており、Futuraのように突き放した感じはない(笑)。一番の違いはオブリークではなくちゃんとイタリックになっている事。f に特徴が出ている。5ウェイトしかないが、コンデンスドや等幅のMonoがある他、キリル文字や中央ヨーロッパ対応版もあり。
筆者が毎年、というか毎日眺めている書体。というのも、ANDO GALLERYが毎年発行している葛西薫氏デザインのカレンダーに使用されている書体がコレなんである(多分)。筆者は毎年これの罫線なしを購入し、デスクの横の壁にかけてある。一度罫線アリを買ってみたが、違和感があってやめた。欧文書体好きは分かると思うが、欧米の表組みは罫線が最小限に抑えられている。縦線はまずないどころか、ヘッダーとフッター以外は横線を省いたものさえある。対して日本人は、すべてのマスにタテヨコびっちり線を入れるのが常だ。これについて、「日本人はつくづく小さい枠に収まるのが好きな国民である」という記述を何かで読んでからというもの、自分は収まってなるものかと、極力罫線を使わず表組みするようにしている(笑)。ははん。ちなみにURW++版、Elsner+Flake版もある。
ファミリーもないし、本文用として紹介するのはどうかなとも思うぐらいクセがあるけど、個人的な好みで。アップライトなイタリック(?)で、和文で言う宋朝体みたいな使い方ができるんじゃなかろうか。このSternは、デジタルと同時に活字としても販売されたそうである。デザイナーはJim Rimmer。カナダでは有名なグラフィックデザイナーのようで、バンクーバーのMonotype社でタイプディレクターを務めた事もある人だという。彼を題材に“Making Faces”というドキュメンタリー映画も制作されたとか。トレイラーがYouTubeにある。ちなみにCanada Typeは私好みのフォントをたくさん作っていて、お気に入りのファウンダリーである。