ちょっと懐かしい書体を紹介する。かつてEmigreというタイポグラフィ雑誌があった。元々ここはファウンダリーで、’80年代後半から’90年代にかけてエキセントリックなフォントを次々とリリースし、この雑誌は当時のデザイン業界のトップを走っていた。若いデザイナーは、みんなこぞってこの雑誌を読んだものである(正確には眺めてた・笑)。んで、Emigreと聞いて私が一番に思い浮かべる書体がこれである。多分Emigreを代表する書体と言っても過言ではなく、私と同年代のデザイナーはだいたい見たことあるだろう。数年前、アートディレクターの佐藤可士和氏が明治学院大学のCIに採用したので知っている方もいるはず。
実はこの書体、ネーミングの際に一悶着あった。作者が考えていた元々の名前はMansonで、これはアメリカの有名な凶悪犯チャールズ・マンソンからとったものだったが、これをEmigreは勝手に変更したらしい。被害者感情に配慮してのことだった。本人はただ宣伝しやすいようにということだったが受け入れられず、最終的にはこの変更を飲んだらしい(この辺の詳しい顛末は作者の著書を参照して欲しい)。しかしこの名前には未練があるようで、サンプルイメージには Ma[n]son と n を括弧書きして残している。