本日は『世界カリグラフィーの日 World Calligraphy Day』らしいのでこちら。古典的カリグラフィーイタリックのデジタル版。16世紀にヴァチカンで書記をしていた Ludovico degli Arrighi が著した La Operina(小品)というカンチェッレレスカ体 Cancellarescha の教則本から起こした書体である。カンチェッレレスカとは「公文書体」みたいな意味で、現代ではまぁイタリックと呼ばれてるヤツのこと。おそらくはこの本が世界最古のイタリック体の教本である。わずか32ページの小さな本で、検索すればあちこちで高解像度のスキャン画像が見られる(例えばここ)が、日本ではフランチェスカ・ビアゼットン氏の『美しい痕跡―手書きへの讃歌』という本に付録として和訳とともに掲載されているので、興味があれば参照してほしい。
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本日は建築家フランク・ロイド・ライト Flank Lloyd Wright の誕生日(1867)というワケでこちら。かわいらしいカジュアルなハンドリッテン。ライトが1913年に、シカゴのアミューズメント施設ミッドウェイ・ガーデン Midway Gardens を設計した際のメモの筆致を元に制作したものとのこと。全体的にだいぶカジュアルで思いの外かわいらしい。大文字と小文字のサイズ差が大きく、それがちょっと品のある感じも醸し出している。One と Two の2種類があり、それぞれちょっとグリフが違う。ほか、ライトのスケッチや矢印を収めた Ornaments もあり。ちなみに、この施設は1929年には閉鎖され取り壊されていてもう見ることはできないが、模型がニューヨーク近代美術館 MoMA に収蔵されている。
ブラックレターとローマンのハイブリッドディスプレイ。20世紀初頭のドイツ人タイプデザイナー Carlos Winkow がスペインで制作した活字書体のデジタル版で、大文字がブラックレター、小文字がセリフというハイブリッド(雰囲気がブラックレターなのでそれに分類しておく)。言われないと分からないぐらい違和感なくデザインされているのがすごい。Regular と Black の2ウェイトの他、Black のアウトラインのみの White、フィルが斜線になった Gris(スペイン語で灰色)、フィルのみの Multi があり、White と Gris の下に Multi を重ねて色付けができるようになっている。
ヴィクトリア朝風味のデコラティブなイニシャルディスプレイ。タスカン Tuscan というセリフが魚尾状に二股に分かれたスタイルで、植物を模した装飾が施されている。全部一体となった Initials の他、文字本体のみの Caps、枝と葉っぱの Branches、つぼみだけの Buds、文字の中にある点だけの Circles と分かれたタイプもあり、これらを色分けして重ね打ちする事も可能。装飾がなく小文字も加えた Regular もあるが、それだけでもなかなかにデコラティブ。
2015年にこのブログで P22 Marcel という書体を紹介した。この書体はあるフランス人男性が書いた手紙の筆致から起こしたものなのだが、フォント制作者のアメリカ人女性はこのフランス語の手紙の内容がどうしても知りたくなった。なぜならこれは、第二次大戦中にドイツからフランスへと送られたものだったからだ。その手紙が、なぜミネソタのアンティークショップで売られていたのか。この手紙を書いた男性は、受け取った人は、その後一体どうなったのか。この本は、それらを調べた顛末を記したものである。Amazon では200件以上ものレビューが付いており、かなり好評だったようである。
興味はあったものの、この本はいわゆるタイポグラフィ本ではないので、筆者の Amazon カートの「後で買う」リストに長年放置されていた。しかしたまたま最近覗いてみたところ、データのミスなのかなんなのかなんと「393円」となっており、しかも残り1冊だったので「まあ買うか」とポチっていま筆者の手元にある。小口がアンカットでクラシックな雰囲気があってよい。ただ筆者は英語が大して読めない。この Marcel 氏の運命を知ることができるのがいつになるかは知る由もない。ひょっとしたらそのまま古書店へ流れる可能性もある。そしてたまたま手に取った人が興味を持つ事になれば、それもまたおもしろいだろう(そうか?)。
ちなみに本日7月14日はパリ祭(フランス建国記念日)だそうである。そんな日に届いた事にちょっと縁を感じる。
本日は 722 で『ナッツの日』だそうなので(なんぢゃそりゃ)こちら。手書き風ローマンとサンセリフのディスプレイ。カリグラファーがよくやるブロードペンでのレタリングでデザインされた(と思われる)書体で、字のサイズが不揃いなカジュアルなタイプである。セリフとサンセリフの両タイプがあるが、骨格はほぼ同じ。セリフの方には、グリフをちょっと変えた Salted(塩をふった)というタイプもある。かわいらしくもしっかりしたグリフで、手練のカリグラファーが書いたんだろうなぁ、というのが判る。
本日はかのゴッホ Vincent Willem van Gogh の誕生日(1853)なので、ゴッホの筆致から起こしたスクリプトを紹介。ゴッホは生前、弟のテオと大量の書簡を交わしたことで有名だが、グリフはその手紙を参考にしたものだそうだ。ややボタッとした、太めでコントラストの弱いスクリプトである。ただ字としては結構読みやすいが、実際そうだったのか、フォントにする際に整理したものなのかは不明。サンプル画像の似顔絵ほかゴッホタッチのイラストアイコンが50点ほど。1ウェイト。
クラシックなゴシックローマン。見ての通りゴシック(ブラックレター)とローマンのハイブリッドのような書体で、15世紀に活版印刷が実用化された頃はこういう書体がぽつぽつあった。現代では新たにデザインされることはほぼなく、だいたいリバイバルになる。これもその類。筆者はこういうクラシカルな書体は大好物だが、使える場面が限られる所がちょっと悲しくはある。18世紀頃に流行ったオーナメントも多数付属。1ウェイト。
本日は画家ポール・ゴーギャン Eugène Henri Paul Gauguin の誕生日(1848)。なのでゴーギャンの筆致をフォント化したものを。タヒチで書かれたノートを元にしてあるそうだ。アウトラインがスムースな Regular とラフな Brush タイプの2つ。Regular の方は Pro 版があり、オルタネートとキリル文字がサポートされている。ほか、ゴーギャンのスケッチや版画をそのままアイコンにした Extra もファミリーにある。しかし P22 はよくこういうフォントを作ってるね。
本日は『睡蓮』でお馴染みのクロード・モネ Claude Monet の誕生日(1840)だそうなのでこちら。モネの筆致っぽい雰囲気を持つスクリプト。’99年にニューヨークのオルブライト=ノックス美術館で行われたモネ展のために制作されたものだそう。モネのサインは結構バラバラなので、あくまで雰囲気をざっくり持たせた、という感じであろう。Regular はしっかり読めるのだが、サンプル画像にある Impressionist(印象派)というバージョンはハッキリ言って読めない(笑)。印象派の絵はあくまで全体の「印象」を大事にしており、細かい形象をかっちり掴んでおらず全体にぼんやりとしてるのが特徴で、この Impressionist はそれを踏襲しているらしく、「なんとなく文字」になっている。目を細めたりしたらなんとなく読めるんじゃなかろうか(笑)。筆者はムリ。