随分前に購入してあったのに紹介を忘れてた(笑)。ドイツのタイポグラフィマガジン Slanted が発行している書体年鑑の第3段。2014年以降に発表された欧文書体の中から優秀なものをピックアップして掲載している。1書体につき見開き2ページずつ。『年鑑』と名はついているが毎年発行しているわけではないのがミソである。日本からは恒川龍一さんの Mighty Slab が選ばれている。なぜか Amazon では取り扱ってないようなので、Slanted のサイトより直接購入する必要がある。日本でも取り扱ってる書店もあるかもしれないが、寡聞にして知らず…。
Archive: 2018
昨年発表された「たづがね角ゴシック」の、情報伝達力強化版(?)。サンプルのたづがねとの比較をご覧いただければ判る通り、情緒を省いてよりシンプルでソリッドな骨格になり、読みやすさ・伝わりやすさが強化されたように思われる。公共のサインはもちろん、食品の成分表示やスマホアプリなどにも適しているだろう。Monotype 社タイプディレクターの小林章さんは、ブログ等で常々日本の公共サインのヘンなところ(主に欧文ではあるけど)を指摘されており、それを解消するためのひとつの解を提示されたように思う。今からでは差し替えが間に合うかどうか分からないが、東京オリンピックに向け、どうかもっと分かりやすいサインが普及することを願う。10ウェイト。ただいま50%オフセール中。
ポップでカジュアルなレタリングスクリプト。カウンターが大きく筆で書いたようなニュアンスがあり、大文字だけでも組めるようにデザインしてあって、カフェやスーパーなどの食料品関連によく似合う美味しそうなスクリプトである。コネクトはしっかり取れており、控えめながらスワッシュオルタネートもある。基本アップライトだが、傾いたイタリックスタイルもある。ウェイトも5つとスクリプトにしては豊富。
かわいらしいモノラインのセミスクリプト。ペンではなくレタリングでデザインされたようなスクリプトで、完全垂直のアップライト。キャップハイトがかなり大きく、大小の文字の差が激しい。ストロークの端も丸く、プロポーションも全体的に丸っこくてカワイイ。多少のオルタネートと多数のリガチャーがある。’30年台のグリーティングカードからインスパイアされたものとの事で、イメージもクリスマスっぽい事から、その辺の用途にいかが。1ウェイトのみ。しかし早いよねあと3ヶ月で今年が終わるとかさ…。
本日は『黒の日』という事で、それ関連の書体をば。めずらしいロンバルディック・キャピタル Lombardic Capitals である。この書体は中世、ブラックレターと組み合わせ、ページや段落の冒頭にイニシャル(ドロップキャップ)として使われる事が多く、当時はこれだけで文を書く事はあまりなかった模様。カリグラフィーの書体ではあるが、ペンで普通の文字のように書く事はできず、レタリングで描かれるのが普通(ビルドアップレターと呼ばれる)。だがこの Orbe はちょっと工夫すれば書けそうではある。現代ではちょっと使いにくく、あまりデジタル化はされていないので、結構めずらしい。これは中でも出来が良く、2009年に TDC ほかいくつかのコンテストで賞を獲っている。1ウェイト。
名前の通りマルチプルなサンセリフとスラブセリフのミクスド。本文用で字種が豊富だが、字形も5種もあり、ヒューマニストだったりネオグロテスク風だったり、はたまた柔らかいイタリック風であったりと様々なバリエーションがある。それぞれにイタリックがあって5ウェイト、さらにサンセリフとスラブセリフのバリエーションがあり、合計90種ものメガファミリーとなっている。どの字形も大変可読性がよく、様々な用途に重宝するだろう。ただいま85%オフセール中。
最近多い、モダンローマンとスクリプトのフォントデュオ。スクリプトの Spice は細いマーカーで書いたようなモノラインで、コンデンスで傾きが強く上下へのストロークも大きい、なかなかダイナミック。モダンローマンの Sugar はコンデンスでコントラストがかなり強く、また腰は低めでやや頭でっかちなプロポーション。フィルにバリエーションがあり、ソリッドな Regular とラフな Rough、アウトラインの Outline、上半分はアウトラインで下半分だけ塗りつぶした HalfColor、上下ではなく左右に分かれた HalfColor Two の5種。ほかフォントではないが、イラストやフレーム、壁紙などの画像も付属しており、サンプル画像はそれらで作られている。ラグジュアリー感もありつつかわいらしく、なかなかキュートな書体。9月いっぱいまで50%オフセール中。
あちこちナチュラルに内向きカーブしているカワイらしいサンセリフ。馬蹄形の U に代表されるように、いろんなステムがちょっと内向きにカーブしているのが特徴的。サンプルには2種の A があるのが判ると思うが、いくつかの字はこのようにオルタネートがある。ノーマルと Alt があるが、パッと見たところ字形に違いは見られず、デフォルトで選択される字形が違うだけの模様。どっちか買えばいいのでは。あとスモールキャップスは SC という名で別になっている。イタリックもあり。ちょっと変わってるが可読性もよく、ある程度の長文にも耐えうると思う。5ウェイト。
本日『野菜の日』らしいので名前だけ野菜っぽい書体を紹介。全体的にゆるい雰囲気ながら、やや筆致にスピード感のあるスッキリしたモダンスクリプト。(多分)筆ではなくポインテッドニブにて書かれたものと思われる。アップライトでカウンター大きめの柔らかい雰囲気で、ステムがきゅっとカーブし、ループも大きくダイナミック。Regular と Extended があって、Extended の方のグリフを確認しようとするとなぜかエラーになるのでハッキリと断言はできないが、多分オルタネートが入ってる。異体字切り替え機能がないアプリでも扱えるようにしてるのだろう。1ウェイト。
使いどころがよく判らない(笑)。モダンローマンディスプレイ。ヘアラインのほっそいコントラストの強いモダンローマンのあちこちが欠けたり変形したりしており、かろうじて可読性を確保している非常に個性的な書体である。パリコレなどのファッションショーに「これどこに着ていくねん」というのなのが出品されたりするが、あれに近い感じがする。ハイブランドのようなラグジュアリー感は非常に強いものの、使うのに困る書体だと思う。けどまあこんなのもどおでしょか? 名前のニシャンタシュは、イスタンブールでハイブランドの集まる高級街の事だそうだ。日本で言う銀座みたいなもんかな。