本格正統派本文用オールドスタイルローマン。15~16世紀イタリアのルネサンス期の書体を元にしたそうで、これぞヒューマニストオールドスタイルというような王道の書体である。字種がハンパなく多く、ギリシャ文字やキリル文字は当然のこと、複雑な記号を要するものも幅広くカバーしており、オーナメント類もあって総グリフ数は2800を超える。イタリックは通常のもののほか、かなりカリグラフィックに寄ったスタイルもオルタネートにある。オプティカルファミリーで5種に分かれており、それぞれ3ウェイト(Display のみ4ウェイト)ずつで計32種。個別購入できる他、Adobe Fonts でも配信中。ちなみに名前の「アルノ」は、イタリアのフィレンツェにある川の名前。中西アルノって歌うまいよね…。
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ヴェネチアンタイプの代表格(といってもあんまり種類はない・笑)。Venetian(ヴェネチア風味の)と呼ばれるタイプのローマンで、特徴としては小さなxハイト、弱めのコントラスト、全体的にカリグラフィー風味があり e のバーが斜め、などがある。15世紀フランスのタイプデザイナー、ニコラ・ジェンソン Nicolas Jenson の書体を元にデジタル化したもので、同様の書体に Centaur などがある。大変シックでクラシカルなので、フォーマルな文書や古典文学などに良いかと思う。オプティカルになっており、本文用の他にキャプション用の Caption、見出し用の Display、小見出し用の Subhead がそれぞれ4ウェイトずつで計32種。個別購入できる他、Adobe Fonts でも利用可。
…しかし「ヴェネチアンタイプのローマン」って変な表現だよね…。
トランジショナルローマンの代表格。18世紀英国のタイプデザイナー、ジョン・バスカーヴィル John Baskerville (1706-1775) の書体を元に制作された。オールドスタイルとモダンの中間の過渡的な(transitional)スタイルのローマンで、オールドスタイルに比べてコントラストが強く、セリフは細くてブラケットが小さい。生まれた英国ではあまりウケが良くなく、アメリカで好まれたようである。この Baskerville も多数のファウンダリーが制作しており、かなりのバリエーションがあるが、この ITC のものが比較的スタンダードらしい。4ウェイト。Adobe Fonts では URW と ParaType の Baskerville が利用可能。ちなみによく「トランジショナル」を「トラディショナル traditional(伝統的な)」と間違える人がいるので注意。
ローマンキャピタルの最高峰(断言)。ローマにあるトラヤヌスの記念柱の根元にある碑文の書体を元に制作されたもの。この碑文の書体こそがすべてのローマン書体の原典であるとされ、ここから何万というローマン書体のバリエーションが生まれたが、Trajan はこの碑文の書体そのものに近い形で制作されている。2000年経ってもこの威風堂々たる雰囲気の人気は衰えず様々な場面で使用されており、特に映画界では重宝されている模様(笑)。1989年に制作されてから二度改定されており、この 3 が最新版。2ウェイトから6ウェイトになり、ギリシャ文字とキリル文字が追加された。個別購入できる他、Adobe Fonts でも配信されている。Adobe Fonts ではカラーフォント版の Trajan Color も利用可。
こちらも先日の Adobe Caslon と並んで超ド定番の本文用ローマン。15世紀フランスのクロード・ギャラモン Claud Garamond (1480–1561) のアップライトとロベール・グランジョン Robert Granjon (1513–89) のイタリックを元に制作された。どっしりした Caslon に比べ繊細でエレガントな印象が強い。特にイタリックはスワッシュオルタネートなどもあり、その辺のスクリプトにも負けない美しさを誇っている。こちらもやはり Caslon や Bodoni などと同様に多数のバリエーションがあるので、比べてみるのも面白いだろう。ちなみに名前は違うが、Sabon もギャラモンの書体を元に制作されている。反対に、ちっともギャラモンと関係ないのに Garamond を名乗る書体もあったりする(笑)。Adobe Garamond も個別購入できるほか、Adobe Fonts で配信されている。3ウェイト。
超絶定番のローマン書体。18世紀英国で活躍したウィリアム・キャスロン William Caslon (1692–1766) の書体を元に制作された本文用書体である。Caslon の書体を元に制作されたフォントは多数のファウンダリーから出ているが、恐らくこれが最もスタンダードだろう。まあ Adobe のアプリケーションに付属していた、というのが一番大きいかもしれないが(笑)。活字は20世紀初頭まで使われており、その頃は「迷ったら Caslon で組め」とまで言われていたそうである。これは今でも生きていて、特にこだわりがなければこれで組んでおけば文句は言われないだろう。これは本文用サイズの活字を元に作成されているためコントラストが弱いが、見出し用のコントラストが強いものは別の作者により Big Caslon として制作されている。1990年にデジタル化され、2012年に字種が増えて Pro となった。個別購入できる他、Adobe Fonts で利用可能。
ヒューマニストサンセリフの代表格。大文字は古典的なプロポーションでサンセリフながら大変堂々しており美しい。小文字はカリグラフィーの要素も多分に含み、x-ハイトが小さく優雅で柔らかさがある。全体的に可読性も良く、長文でもまったく問題ない。1928年に活字で制作されたものが1989年にデジタル化され、それをさらに2015年にファミリーや字種を拡張して名前に Nova が付いた。個別購入できる他、Adobe Fonts でも配信されている。
さてこの Gill Sans、というか作者のエリック・ギル Eric Gill だが、大変優秀なタイプデザイナーではあったが、実子や使用人に対し性的虐待を日常的に繰り返していたことが明るみになっており、これを理由に彼の書体そのものをボイコットする人もいる。筆者はというと、書体に関しては全然気にしていないというのが本音である(笑)。これからも躊躇なく使用するだろうが、「どうしてもその書体でなければならない」というケースもあんまりないので、何が何でも使うわけでもない。まあ適宜対応する、というぐらいである。本ブログの読者も個々の判断でお使いいただければと思うし、自身と反対の意見を攻撃することもなきように願いたい。考え方は人それぞれなのだから。
ちなみにギルの出身国である英国の高級ステーショナリーブランドのスマイソン Smythson のサイトは見出しに Gill Sans が使用されている。あと2022年に行われたエリザベス女王の国葬の式次第の公式文書がダウンロード可能なのだが、これはギルの書体の Perpetua で組まれていた。なんか本国でもあんま気にしてないのでは、という気がする。でなきゃ Nova に拡張しなかったろうしね。
Minion 紹介しちゃったらこちらもせねばなるまい、ということで。2002~12年頃までは Apple アップルのロゴとなり、コーポレートフォントとしても採用されていた書体。これといった強い特徴がなく、とにかくクセがなく読みやすいスッキリとした本文用ヒューマニストサンセリフ。1992年に登場し、Minion と並んで Adobe のアプリに付属していた。つまりセリフは Minion、サンセリフはこちらをという意図だったと思う。日本でいえば Mac に搭載されたヒラギノ明朝とゴシックのような扱いで、とにかく何に使っても特に問題を起こさないよ、という優秀な書体である。こちらもバージョンアップを繰り返し、今では字幅が4種類5ウェイトずつで計40種となっている他、ヘブライ文字、アラビア文字、ベンガル文字、デーヴァナーガリー版もある。個別購入できる他、Adobe Fonts でも配信中。
本格派の定番オールドスタイルローマン。ルネサンス期の書体をベースにした本文用ローマンで、非常に読みやすく字種やファミリーも大変豊富。特にこだわりがないのであれば、長文はこれで組んどきゃとりあえず失敗はないだろう。1990年のリリース以降何度かバージョンアップを繰り返しており、2023年現在はこの Minion 3 が最新。ギリシャ文字とキリル文字のデザインを見直し、アルメニア文字と IPA(国際音声記号)が追加された。オプティカルファミリーになっており、本文用のレギュラーと、大見出し用の Display、小見出し用の Subhead、キャプション用の Caption があり、それぞれイタリックもあって4ウェイトずつ。Adobe Fonts で配信されているので、Adobe CC ユーザーは購入せずとも使える。
本ブログは教科書を開けば必ず載っているような超有名ド定番書体を紹介するのはなるべく避けていたが、興味はあっても本も買わないような不届者デザイナー(大暴言)が増えているようなので紹介していくことにした。定番書体は #standard というタグを付けているので、参考までにどうぞ。
かわいらしいアール・デコ風味の半スクリプト。Charles Blumelein という人が1930年頃のニューヨークでコツコツと200種類ほどのスクリプトをデザインしていたそうで、そのひとつをフォント化したものだそうである。この頃はこういうスクリプトと通常のタイプフェイスの中間のような書体がよく作られており、それを筆者は勝手に「半スクリプト」と呼んでいる(というか今作った)。通常は水平のバーが右肩上がりで、全体的にも右上がりのグリフとなっている他、M や N はアーチが大きくなっていたりと、あちこちユニークな処理が施されている。雰囲気はレトロでかわいらしく、ロゴなどに使うとおもしろいだろう。Adobe Fonts にはこのファウンダリーが復刻した Blumelein の書体が多数あるので、使ってみてはいかがだろうか。1ウェイトのみ。