去る11月23日、オランダのグラフィックデザイナー・タイプデザイナーの Gerard Unger さんが亡くなられたとの報が入った。氏を偲んでこの書体を紹介。「オランダ」の名を持つ、ガッチリカッキリクッキリした工業製品を思わせるスラブセリフ。オランダの印刷機メーカー Océ のためにデザインされたものとの事。セリフが膨らんでいるのが特徴で、ややコンデンスでx-ハイトが高く読みやすい。この「ややコンデンスでx-ハイトが高い」のが氏の書体の特徴で、他のデザイナーは書体で作者を判断するのは難しいが、氏の書体、特にローマンはこれらの特徴に加え「キリッとしたセリフ」を持ち、筆者はなんとなく判る。良い書体を作る良いデザイナーであったなと思う。5ヶ月ほど前に奥様を亡くされたばかりであったとか。76才、筆者の母も同じ歳で亡くなった。Rest in peace.
Category: Serif
繊細で尖ったイメージのディスプレイローマン。全体的には細いウェイトにコンデンスな書体で、ところどころ大きなスパイクのようなセリフが付いているのが特徴的。基本的には大文字のみだが母音を含んだリガチャーが多数あり、母音の方は小文字のグリフになっていて、場合によってはそれが傾いていたりする。とても攻めた耽美的でアーティスティックな書体である。1ウェイト。現在フリーでダウンロード可能。いつか有料になるのかな? お早めに。
ぬちょっとしたオーガニック感があるローマン。若干カリグラフィー風味もあるかなという感じで、骨格も古くヴェネチアン風味もあり大変クラシックで美しい。字種も大変多く、発音記号は2つ重なったものもあり、汎ヨーロッパはほぼ網羅しているだろう。数字も色んなタイプが揃い、もちろんスモールキャップスもある。文学作品なんかにも似合うんじゃないだろうか。9ウェイトとファミリーも豊富。
セリフが反るのではなく、逆に膨らんでいる変わったローマン。レギュラー以下のライトウェイトはストロークにもほとんどコントラストがなく、モノラインのスラブセリフに近い印象である(太いウェイトはコントラストが出てくる)。フィルにソリッドなものと、サンプルのようにステンシルになったものと2種ある。ソリッドなものは長文用としても使えるほど可読性は良い。両方ともイタリックもあり6ウェイトで計24種。
コントラストの弱いクールなディスプレイローマン。ライトウェイトでヘアラインがなく、全体的に抑揚が弱くてただただ細い。骨格は碑文系ではないが、とても高級感があって大変美しい。セリフはウェッジ型。小文字はなくスモールキャップスでリガチャーもないが、こういうのはあまりゴタゴタ凝る事はせずに、素直にシンプルに組んだ方が映えるだろう。1ウェイトのみだがイタリックはあり。
大変クラシカルで優雅なヴェネチアン。元は Frederic Goudy が1924年にデザインしたもののデジタル版。A のてっぺんにセリフがあるのが特徴的。ごく少数ながらオーナメントも含まれており、それとは別に動物のイラストアイコンがあるところも変わっている。以前にも Goudy のヴェネチアン Village を紹介したが、それとは若干細部が異なっている。見比べてみるのもおもしろいだろう。イタリックがあるのも違う所(ローマンでヴェネチアンでイタリックがあり名前はイタリアン・笑)。ウェイトは2種だが、Regular の他は Bold ではなく Light という珍しい組み合わせ。ヴェネチアンにボールドフェイスは似合わないという判断だろう。本日は『古書の日』らしいので、古さを感じさせるこんな書体を紹介してみたがいかが?
名の通り、モードな雰囲気のフレアセリフ。アール・デコ風味のあるコントラストの強い字体に、細いラインの端にのみちょっとしたフレアセリフが付いていて、オシャレな雰囲気を醸し出している。K や R、X の右のレッグが垂直に裁ち落とされているのがおもしろい。大文字にはリガチャーが大変豊富に揃っており、おもしろい文字組が楽しめる。x-ハイトが大きかったり、ややちょっと野暮ったさがあるのが残念。もっと尖っても良かった気はする。5ウェイト。
本日はかのトラヤヌス帝の誕生日だそうな(A.D. 53)。このブログでは散々 Trajan 系の書体を紹介してるが、まだまだあるようなので本日はこちら。かのアメリカのタイプデザイナー、Frederic Goudy が自著 The Trajan Capitals のためにデザインした書体をベースに制作されたものだそうだ。カティチ神父の分析よりも早くデザインされたもののようで、U が若干角ばってたり、J がベースラインを突き抜けてないなど、Trajan と比べやや堅めの印象で、Goudy らしい、アメリカンらしいなという感じがする(個人的な感想)。小文字はなくスモールキャップスだが、ギリシャ文字・キリル文字もサポートしている。3ウェイト。
使いどころがよく判らない(笑)。モダンローマンディスプレイ。ヘアラインのほっそいコントラストの強いモダンローマンのあちこちが欠けたり変形したりしており、かろうじて可読性を確保している非常に個性的な書体である。パリコレなどのファッションショーに「これどこに着ていくねん」というのなのが出品されたりするが、あれに近い感じがする。ハイブランドのようなラグジュアリー感は非常に強いものの、使うのに困る書体だと思う。けどまあこんなのもどおでしょか? 名前のニシャンタシュは、イスタンブールでハイブランドの集まる高級街の事だそうだ。日本で言う銀座みたいなもんかな。
さ、2ヶ月後にハロウィンが迫ってるということで(早えよ)ぴったりな書体を紹介。コンデンスでラインガタガタなディスプレイローマン。見ての通り g がかなり特徴的。小文字(とスモールキャップス)にはベースラインよりかなり上がった上付きのようなグリフがあって、よりダイナミックな文字組みが楽しめるようになっている。以前に紹介した MonsterPie と何が違うねん(笑)という声が上がりそうだが、こちらの方がより活字感がありかっちりしている。1ウェイトのみ。