アメリカはユタ州にある Actual Source というデザイン事務所が不定期(?)に発行しているアートブックの第8号で、今回はタイプデザイン特集。とは言ってもほぼ書体見本帳となっており、近年制作された個性的な書体を100種紹介している。1書体平均5、6ページほど使っており、600ページものボリュームがある大著。印象としてはディスプレイが多いかなという感じ。ちなみに書名の shoplifter とは「万引き」の事で、映画の「万引き家族」の英語タイトルがこれである(笑)。
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さて新天皇誕生という事でこちら。ちょっとレトロな直線で構成されたディスプレイ。’80年代のゲームなどを彷彿とさせる書体で、曲線部がなく、直線と斜線のみで構成されている。飾りのない Regular から、ちょっと飾りのある Decorative、縁取りのある Outline など8種のバリエーションがあり、それぞれにイタリックがある。イタリックは特にレトロ感が出る。残念ながら小文字はない模様。
1986年の本日、チェルノブイリ原発事故が発生した。というワケでこちらの書体を。陸上トラック型楕円(なんか数学的に名称ないの?)を基調としたステンシルディスプレイ。1字1字は遠目にはややコーヒー豆っぽい。個人的には’80年代ぐらいの雰囲気を感じてレトロだなぁと思う。Amelia という古い書体に若干似てるかな。A, M, V, W はデフォルトではテーパードになっていて他の字とは若干字形が違うが、楕円形を合わせたオルタネートも持っている。作者がなんでこんな名前をつけたのかは不明。1ウェイト。
本日は『世界ペンギンの日 World Penguin Day』だそうなのでこちら。切り絵のようなファットフェイスディスプレイ。紙をラフに切り取って形作ったような可愛らしい書体である。グリフには白黒反転したものがあり、字を囲う黒い部分はただの四角ではなくガタガタしており、こちらもなかなかおもしろい。「数年前(1995年より前)に日本のタイポグラフィ雑誌で見た書体にインスパイアされた」と説明にあり、感じからしておそらくは平野甲賀氏あたりの書体を見たのかなー、と推察する。イタリックもあり、Bold と Black の2ウェイトの他、いわゆる袋文字の Outline がある。
エレガントかつ可愛らしいモダンスクリプト。柔らかな雰囲気の女性らしい(性差別?)サードウェービーなスクリプトで、見た感じ筆ペンでデザインしたのかなーという感じ。このテの書体のご多分に漏れずオルタネートは用意されているが、全グリフ数は500程度と最近のものとしてはやや少なめ。ただそれでも十分いろんなバリエーションが楽しめるだろう。1,600円程度と非常に安いのも魅力的。サンプルイメージに日本語が入っているものがあるが、作者はインドネシア人の模様。
本日は英国の劇作家、ウィリアム・シェイクスピア William Shakespeare の誕生日?(1564)で命日(1616)らしいので、有名な作品名のこちらを。ややブラックレター風味のあるディスプレイローマン。出自のはっきりしない Kitterland という書体を元にしたとある。多分にカリグラフィー風味も含んだクラシカルな雰囲気を持ち、確かに英国風味もある(気がする)。ちょっと野暮ったいが、おもしろい書体だろう。フィルはソリッドな Regular とかすれてる Headstone、インラインの入った Handtooled の3種。オルタネートもちょっとある。
言葉では何とも説明しづらいディスプレイ。基本は Didone に近いコントラストの強いジオメトリックなローマンで、コントラストの付け方はアール・デコ風。バーや斜めのストロークがある字はそこで上下あるいは左右に分かれており、かなりおもしろい独特な形をしている。この文字に似合うヘアラインにティアドロップの付いたオーナメントも付属している。可読性に難はあるがラグジュアリー感があり、ファッションや化粧品などによく似合うと思う。大文字のみで1ウェイト。
名前がエロい(笑)正統派オールドスタイルローマン。ルネッサンス期の書体を元にしているとあり、その通り往時の雰囲気を持ったクラシカルで大変エレガントなローマンである。当時のものよりはx-ハイトを大きく、c や e などの開口部を開くなどして可読性を向上させている。オルタネートもあり、A のバーが波打ってたり、K や R のレッグが伸びたりしている。リガチャーも50以上。数字やアクセント記号も十分揃っており、総グリフ数は900を超える。当然ながらイタリックもあり。7ウェイト。元々パックで3万しないというこのテとしては大変安い上、ただいま66%オフセール中。
活字っぽいようなカリグラフィーっぽいようなスクリプト。14、5世紀にフランスやドイツでよく使用されていたカリグラフィー書体のバタルドゥ bâtarde(またはバスタルダ bastarda またはバスタード bastard)と呼ばれるブラックレターの一種を元にデザインしたとあり、本来はもっと傾きが弱いが、こちらはかなり傾いていてスピード感がある。コントラストも強く、活字感が強い。結構装飾的ではあるが、それは元々がそんな感じである。大文字はデフォルトでスワッシュが付いており、オルタネートはほとんどない。代わりにリガチャーとフローリッシュが少々。5ウェイト。ちなみにはバタルドゥとは『私生児』という意味だが、なんでこんな名前が付いたかはちょっと忘れた(笑)。なんだっけ…修道院の外で民衆の間に自然発生した書体だからとか何とかだったかな。
アール・デコ風味のある可愛らしいディスプレイサンセリフ。基本的にジオメトリックで、プロポーションは全体的に頭でっかち。ちょっとステムの太さがアンバランスだったり、カーブがぎこちなかったり、バーの端の裁ち落としの角度が変わってたりと色々とちょっと変わった字形がおもしろい。E と O にオルタネートと、L と母音5つにリガチャーがあるそうだがグリフは確認できない。購入してみて欲しい。イタリックがあり2ウェイト。