本日は英国のタイプデザイナー、Eric Gill の誕生日。私生活ではかなりアバンギャルド(笑)な人だったようだが(詳しくは語らない)、タイポグラフィの世界では大きな功績を残している。彼の書体は大変有名なので特に紹介もしなかったが、ま、せっかくなので。恐らく一番有名なのは Gill Sans だろうが、ローマンの方ではこの書体が最もポピュラーかなと思う。ややコントラストの強いトランジショナルローマン。Gill は碑文彫刻を得意としてたので、大文字にはローマンキャピタルの影響が強く見られる。全体的にクラシックで大変エレガントな書体である。
ちなみに筆者はこの書体をかなり強く覚えている。なぜかと言うと、日本タイポグラフィ協会が発行している機関誌『typographics ti:』の第231号(2003年発行)に掲載されていた印刷史家 Beatrice Warde の This is a Printing Office という詩が、この書体で組まれていたからである。制作者は嘉瑞工房の高岡昌生さん。当然活版印刷であった。大変美しいと思った筆者は、これを定規で1行1行一生懸命測ってまったくマネしてデジタルフォントで制作し、ハガキサイズに縮小してフレームに入れてトイレのタンクの上に飾っていたが、2~3年前のある日タンクの蓋を開けた際に水没させてしまった(笑)。もう10年以上も前に作ったのでデータがもうない。当時は Bitstream のコピー書体だったんで Titling がなかった。ちゃんとしたのを買ってまた作ろうかな。
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このブログを始めて3年になるが、まだ紹介してなかったタイプのスクリプトを紹介する。フレンチ風味のアップライトスクリプト。「ロンド Ronde (=輪舞曲)」と呼ばれるタイプで、20世紀初頭にアメリカでデザインされたもの。元は Typo Upright という名前だったらしいが、Linotype に版権が移った時に Linoscript と改名されたようで、なので「ライノスクリプト」と読むらしい。非常に有名で好きな書体だが、あんまりこのタイプは需要がないのか、他にはあまり見当たらない。古い書体でウェイトバリエーションもオルタネートもなく淋しいので、今あえてこれを拡張してみてもいいんじゃないかな~。と思ったりもする。売れないか…。
URW++ から DIN が出たのでご紹介。Linotype や FontShop からも出てるので今更感はあるけども、まぁ選択肢が増えるのはいい事なんじゃないでしょうか。有名な書体なので説明の必要もないかもだが一応しておくと、DIN とは「ドイツ工業規格」の事で、元々は役所が作る道路標識やマンホールなどに入っていた色気のない無骨な書体なのだが、それがウケて今は広く使用されている。私もよく使用しており、ロゴのプレゼンシートなどにちょろっと使ったりすると、「こっちの書体の方をロゴにしたい」とか言われることがある(涙)。なので最近は使うのを辞めた(笑)。くっそう。
そんな事はさておき、Linotype の DIN Next とちょっとだけ比較してみると、Regular ではこちらの方が若干ウェイトが軽い。あまり使われないアクセント記号が入ったグリフがあったり、矢印や三角などのちょっとした図形があって、字種はこちらの方が多い。ま、Next の方は Paneuropean 版が別にあって、そっちでアクセント記号はカバーされている。字幅は Next は2種、こちらは3種。Regular と Condensed の間に Semi Condensed がある。他にも違いがあるかもだが、詳しくはご自身で。ただいま50%オフセール中。$100 で全部揃うのは今だけ。オトクだと思う。
本日は「石の日」らしい(なんだそりゃ)ので、御大 Sumner Stone 氏の書体を紹介。Stone と言えば Stone Sans が思い浮かぶが、II が出てるとは知らない人も多いと思う。オリジナルの Stone Sans よりステムにコントラストがなくなってほぼモノラインになっており、ややコンデンス気味になっているだろうか。全体的に明るく軽めに仕上がっていて、時代の雰囲気にマッチしているだろう。本日より仕事始めの所も多いかと思う。本年もホソボソと続けますのでどうぞヨロシク。
ローマンキャピタル書体の代表格・Trajan のサンセリフ版。まああまり説明の必要はないだろう。このテのサンセリフはいくつか出ているが、ほぼほぼこれが決定版だと思う。なんたって最も美しい Trajan がベースになってて、その同じ発売元の Adobe から出てるのでね。ギリシャ文字とキリル文字が追加になっているが、これは大元の Trajan もバージョン3(Trajan Pro 3)になって追加されている。6ウェイト。
先日 Next 化された(Next 化ってなんだ) Futura に続き、同じくジオメトリックサンセリフの代表格(そうか?)である Kabel も負けじと最近 Neue 化された。Futura に比べ、a、e、g などにちょいとクセがあって余り使われている印象はないが、筆者は結構好きである。こちらも字種とウェイトが大幅に追加され、使いやすくなっている。スモールキャップスやオールドスタイル数字の他、先に挙げた aeg などにちょっと字形の違うオルタネートが用意された。9ウェイト。ただいまファミリーパック $399 の所、$99 ぽっきりセール中。Linotype は結構セール期間を早く打ち切る傾向があるので(笑)、欲しい人はお急ぎを。
Futura を現代的にリファインしたもの。らしい。詳しく見比べてないのでどこがどうとは言えないが、すぐ判る特徴としては、j や l のしっぽが曲がっており、より判別しやすくなっている(曲がってない字形もオルタネートで持っている)。あとスモールキャップスとオールドスタイル数字が加わった。fi のリガチャーのデザインがちょっとクドいかな…。レギュラー幅が6ウェイト、コンデンスタイプが4ウェイトある。販売元の Neufville は、最初に活字の Futura を発表したドイツの Bauer の正当な系譜じゃなかったかしらん…。ちょっとうろ覚え。
Bickham Script などと並ぶカッパープレートスクリプトの古典(?)。コントラストが強い、まぁまぁよくあるカッパープレートだが、大文字は結構デコラティブにデザインされていて華やかな雰囲気がある。発表は94年と古いが、Pro 版にバージョンアップしオルタネートの字種が増えてはいるものの、最近のスクリプトほどの数はない。でも使い勝手はそれなりに良くなっているだろう。2ウェイト。
知らない書体だったが(笑)、セールのお知らせが来たので紹介。正統派オールドローマン。15~6世紀の Nicolas Jenson や Francesco Griffo の書体を参考にしたとあり、なるほどと思わせるクラシックなローマンである。2000年に Titling という見出し用の大文字のみのファミリーを加えた際、他のファミリーにも手を入れ字種を拡張して Pro 版としたそうな。こういうのでビシッと組んだ招待状とかもフォーマルな結婚式には非常によろしいかと思う。ただいま全ファミリーパック $245 のところを $79 セール中。今日より3日間のみなので急いで! ま、Monotype サブスクリプションに組み込まれてますけどもね。
そういえば、初めて見る形の M が入っている。この字形見たことない。誰か知ってますかね。単に M のオルタネートとしてグリフに入ってるってだけかな。にしてもオーナメントとしても見たことない。なんだこりゃ?
※追記:数学記号で P の筆記体であり、ヴァイエルシュトラスの楕円函数というものに使用するものらしく、本来 U+2118 に入れるらしい。ほおお…。
本日6月9日は(音楽の方の)ロックの日だそうだ。とゆーわけで名前以外何の関係もないが(笑)Rockwell という書体を紹介する。元は世界初のジオメトリックスラブセリフ(と説明には書いてある)である Litho Antiqua という名前で1910年に発表されたものをリファインしたものだそうだ。Monotype のライバルである Linotype が開発していた同じ種類の書体 Memphis の対抗馬として作られたとある。違いがよくは解んないが(笑)、Memphis は太いウェイトの r のイヤーがドットになっている。他にも細かい違いはあるだろう。比べてみるのも楽しいかもしれない。